ふくらはぎ
下腿三頭筋(Triceps surae)は、大腿骨外・内側顆から踵骨隆起後面までの下腿後面の筋肉です。
日常動作では、歩行動作における離地の押し出しの段階で使われます。また、ハイヒールの着用時は常に収縮を強いられます。
スポーツ動作においては、主にはランニング、ジャンプ、サイクリング、ボートなどの膝関節屈曲・距腿関節底屈の中心的な役割を果たします。
下腿三頭筋は足関節底屈に働く際、全底屈筋の中でも80%程度の役割を担っているとされています。
そのため下腿三頭筋の筋スパズムにより筋収縮弛緩能力の低下がパフォーマンスの低下にも影響するので、下腿三頭筋のコンディショニングは重要です。
下腿三頭筋に持続的な圧迫を加えながら、足関節の底・背屈を行います。
ヒラメ筋線維は赤筋、腓腹筋線維は白筋の比率が高いため、収縮速度が異なるため踵骨腱に剪断力が生じます。
拘縮すると、下肢の体液循環の低下を招き、むくみの原因となります。
【分類】
下腿三頭筋は、腓腹筋(Gastrocnemius)とヒラメ筋(Soleus)から構成され、のちに合流してアキレス腱となる筋肉です。
腓腹筋は、起始部の違いにより外側頭と内側頭に分類できます。
※ヒラメ筋腱弓
ヒラメ筋腱弓は起始部近くにある、脛骨神経・後脛骨動脈・後脛骨静脈の通路です。
〈付着〉
腓腹筋内側頭(MG)は、踵骨隆起に向かって真っ直ぐ付くわけではなく、捻じれながら踵骨の外側に停止します。
更に踵骨が回内することでさらに腓腹筋内側頭からなるアキレス腱は伸張される状態になります。
A:前側、M:内側(右)、P:後側、L:外側(左)、Sol:ヒラメ筋、MG:腓腹筋内側頭、LG:腓腹筋外側頭)
アキレス腱を障害しやすい人の特徴として、足踵角度(Leg Heel Angle:LHA)※が大きく距骨下関節が回内位であり、アキレス腱が硬い人です。
※足踵角度
足踵角度(Leg Heel Angle:LHA)とは、立位での下腿軸(下腿中央と踵骨隆起を結んだ線)と踵骨軸(踵骨隆起と踵中央を結んだ線)のなす角度のことです。
着地していない状態では回外位になっていることも多く、立つことで足は回外位になったり、回内位になったりするため、立位状態で計測をします。
LHAは、成長発達段階(新生児期、初期歩行期など)に応じて変化し、また直立二足歩行を行うヒトが効率よく身体を操作するためには、静止時・運動時に関わらずLHAができる限り中間位に保つことが重要です。
正常角度は3~5°回内位です。
距骨下関節が回外していると足の外側に体重が乗りやすい状態になります。
このような状態で運動を続けたら足の外側に疲労がたまり、ジョーンズ骨折(第5中足骨基部骨折)のように外側の骨の疲労骨折を起こす可能性もあります。
ジョーンズ骨折は、サッカーやバスケ、ラグビーなどで好発する骨折の1つです。
過荷重・過負荷によってLHAは簡単に破綻し、身体各部にマルアライメントをきたし、身体各部に様々な悪影響を及ぼしかねません。
〈LHAの破綻がきたす障害〉
参考文献】
1.肋骨江玉睦明ら:アキレス腱のねじれ構造の肉眼解剖学的検討.新潟医療福祉学会誌.13(1).45-45.2013
2.入谷誠、入谷式足底板 ~基礎編~(DVD付) (運動と医学の出版社の臨床家シリーズ).運動と医学の出版社.2011
腓腹筋
腓腹筋はヒラメ筋の上に覆い被さっている筋肉で、踵から膝をまたいで、大腿骨まで繋がる二関節筋です。
大腿骨内側上顆および外側上顆から起始する2つの筋頭を持ちます。
また、長期臥床後では腓腹筋の方が筋量低下の著しいことが知られており、リハビリテーションでは念頭に置いておく必要があります。
福永哲夫教授(東京大学)を中心とした研究グループでは、超音波法を用いて筋腱複合体の働きについては画期的な研究成果を次々と積み上げてきている。
例えば、歩行運動で効率的なエネルギー発揮が行われているのは、腓腹筋が短縮性収縮することに先立って伸長性収縮が行われるためであるといわれてきました。
しかし、超音波法を用いて歩行中の腓腹筋の筋線維と腱の長さの変化をとらえてみると、腓腹筋が活動しているときには、筋線維の長さはほとんど変わらず、腱組織に著しい伸長がみられました。このことは、筋腱複合体が長く伸びる加速相において、筋線維は等尺性収縮による力発揮をしており、この間に腱組織の伸長によって弾性エネルギーが蓄積されていることが観察されました。
また反動をつけないで、膝を90°屈曲させた姿勢から全力で垂直跳を行なった場合、腓腹筋とアキレス腱の筋腱複合体では、全体の長さは第1段階では変わらないが、筋は短縮性収縮を行い、腱組織は引き伸ばされる。
第2段階の離地期では筋腱複合体の長さは短縮するが、筋繊維は等尺性を保ち、前段階で引き伸ばされた腱組織が短縮し、そのエネルギーで垂直跳動作が遂行されるということが明らかにされました。
このことから察するに筋肉の柔軟性ということだけではなく、腱の柔軟性というものが大事だと言えます。
機能〉
1.運動機能
足関節の底屈だけでなく膝関節の屈曲時にハムストリングスの補助としても作用します。
2.ミルキングアクション
腓腹筋は、全身の70%にも及ぶ下半身の血液を心臓に押し戻すポンプ作用があることから「第2の心臓」と言われ、この働きをミルキング・アクション(milking action)と呼びます。
腓腹筋が収縮することで下肢の静脈血を筋肉で圧迫し、全身の血液循環を促進するだけでなく、血管の老化を防ぐとも言われ、健康維持に効果があります。
【筋力トレーニング】
1.スタンディング・カーフレイズ(Standing Calf Raise)
2.ドンキー・カーフレイズ(Donkey Calf Raise)
3.スクワット・カーフレイズ(Squat Calf Raise)
4.ヒップリフト・カーフレイズ(Hip lift Calf Raise)
【ストレッチング】
腓腹筋の伸展は、足関節の背屈のみならず、股関節屈曲位で行うことが重要なので、通常行われている『アキレス腱のストレッチ』では不十分です。ダウンドッグポーズや足底背屈板での前屈が有効です。
腓腹筋の筋長は、外側頭より内側頭の方が長いため、内返しのポジションで行うことで、より効果的なストレッチが可能です。
ヒラメ筋
ヒラメ筋は、下腿背面にある遅筋線維が著しく優位な筋肉です。
機能〉
腓腹筋とは異なり、ヒラメ筋は単関節筋のため足関節の底屈のみに関与し、特に膝関節屈曲時に大きく貢献します。
【拘縮】
ヒラメ筋の拘縮は、ヒラメ筋腱弓※での絞扼を招き、血管(後脛骨動脈、後脛骨静脈)と神経(脛骨神経)を圧迫してしまいま
す。
※ヒラメ筋腱弓
ヒラメ筋腱弓は、起始部近くににある、脛骨神経・後脛骨動脈・後 脛骨静脈の通路です。
症状〉
1. 足の冷えやむくみ・しびれ
2. 脛骨神経支配の踵部付近の疼痛の有無
3. 内踝後方を通過する後脛骨動脈の拍動性の低下
〈検査〉
ヒラメ筋腱弓の手前の膝窩動脈の拍動を左右同時に触診します。
〈対処法〉
1.膝窩動脈の拍動に左右の時間差あり
膝窩動脈より上での絞扼が疑われるため、ハムストリングスのストレッチング・リリースを行います。
2.膝窩動脈の拍動に左右の時間差なし
ヒラメ筋腱弓での絞扼が疑われるため、ヒラメ筋のリリースとストレッチングを行います。
(1) 圧迫
ヒラメ筋腱弓に両母指を当て、軽く圧迫を加えながら押し広げます。
(2) ストレッチング
ヒラメ筋、腓腹筋のストレッチングを行います。
これを数回繰り返した後に先ほどの動脈の拍動評価と疼痛の有無を確認します。
【筋力トレーニング】
ヒラメ筋をアイソレーションさせた筋力トレーニングは、十分に膝関節を曲げて行うことができるシーテッド・カーフレイズ(Seated Calf Raise)が最適です。
【ストレッチング】
ヒラメ筋をアイソレーションさせたストレッチングは、十分に膝関節を曲げて行うことが重要です。
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