乳製品その3
3.成長ホルモン
最近アメリカの一般のスーパーでもオーガニック・コーナーを設けている所が多くなってきました。
オーガニック牛乳も、数年前に較べると随分手軽に手に入るようになりました。オーガニック牛乳の箱には、大抵、以下のような記述があります。
“This milk was produced without the use of (GROWTH)HORMONES, ANTIBIOTICS or PESTICIDES.”
つまり、こう表示されているオーガニック乳製品以外の、乳製品には、ほとんど全てに(growth) HORMONES,ANTIBIOTICS,PESTICIDESが含まれているということですが、それは一切表示されていません。乳牛に投与されている“growth hormone”(成長ホルモン)、その中でも問題視されているgenetically engineered rBGH (Recombinant Bovine Growth Hormone). 遺伝子組み換えによって作られた通称rBGHホルモン(ヨーロッパでは、このホルモンには発がん性があると言われている)についてです。
このホルモンは、牛乳の生産量を著しく増加させる(通常の10~40%)ホルモンとして米国化学メーカーのモンサント社(Monsanto Corporation)によって開発され、アメリカでは1993年に承認され、あっと言う間にアメリカの多くの乳牛に投与されることになりました。そのようにして量産された乳製品は、バター、チーズ、ヨーグルト、アイスクリームなど様々な形でから入って来ていることになります。
カナダでは、過去8年以上に渡って検討の末、1999年にrbSTを認可しないことに決めています。カナダの研究では、ホルモン自体の人体に対する影響への懸念もさることながら、ホルモン投与により、牛の乳腺炎をはじめとする乳房の感染が増加し、その感染を防ぐために抗生物質が多用されることになり、その結果ミルクに抗生物質が残留し、それを飲んだ人間にも当然悪影響があるとしています。
このようなホルモン投与は乳牛だけではなく、アメリカでは食肉牛にも、その成長を促す3種類の天然ホルモン、3種類の合成ホルモン、合計6種類のホルモン使用が許可されており、ほとんどの牛に投与されています。オーストラリアでは5種類、カナダでは3種類、日本では4種類が認可されており、EUでは一切認められていない。アメリカでは、このようなホルモン剤は人体に害はない、安全だと証明されたからFDAによって認可されていますが、カナダやEU諸国では反対の見解を取っており、このホルモン剤の安全性を一切認めていません。このことからこれらのホルモン剤を投与されたアメリカの乳製品、食肉の輸入を1985年以来一切認めていないという事実は消費者として重視するに値する問題です。
このような両サイドの見解の違いは「ホルモン戦争」と呼ばれるまでに発展しています。それは、EUへの輸出をしたいアメリカがEUの輸入禁止措置が「科学的根拠に乏しくSPS協定に違反している」と提訴し、それを受けてEUはさらに、科学的根拠を示した上で1999年にアメリカ産牛肉の全面禁止措置をとり、両者の争いが過熱したからです。
イタリアやプエルトリコ、フランスではホルモンの残留する牛肉を食べた幼児に乳房が大きくなったり、体毛が生えたり、初潮の早期化が報告されています。アメリカでも、近年、初潮の始まる時期が非常に早くなってきており、ホルモンの影響ではないかと巷では囁かれています。ただ、そのような懸念が即、ホルモンの使用禁止につながるわけではなく、冒頭のような疑念を抱く人はオーガニックという選択肢をとるようになってきているのです。
肥育用ホルモンの作用
1.性質が温和になり集団飼育が容易になる
2.成長が早まり飼料の節約できる
3.肉質が柔らかくなる
4.肉の量が増加する
EUでは、先にも述べたようにホルモンに関しては非常に慎重な姿勢を取っており、天然型、合成型伴に禁止しています。日本では以前は、天然型ホルモンは自然界に存在するので問題がないとして認められ、合成型ホルモンは禁止されていましたが、1995年の食品衛生調査会の答申で、「低用量であれば問題なし」ということで残留基準地をクリアしていればOKということで認可され、そういったアメリカ産牛肉が輸入されていることになります。
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